中古車を購入して、楽しみにしていた納車。
ところが数日後――。
エンジン警告灯が点灯した。
エアコンが効かなくなった。
走行中に異音がする。
さらに販売店へ連絡すると、
「中古車なので仕方ありません」
「保証なしで販売した車なので有償修理です」
と言われた。
こんな状況になったら、
- 「修理代って、自分が払わなければいけないの?」
- 購入後に故障したからといって、必ず販売店が全額負担するわけでも、必ず購入者が負担するわけでもありません。
- まず結論|「壊れた時期」だけでは決まらない
- 販売店の保証です。
- 「保証期間」だけを見ないこと。
- 「保証あり」だけでは保証内容は分かりません。
- 「契約した内容と、実際に引き渡された車の状態が違っている場合に、売主側が負うことのある責任」
- 「保証なし・現状販売」
- 販売店の保証制度と、法律上の責任は分けて考える必要があります。
- 故障した部品と故障原因を見る必要があります。
- 期間だけで決めることはできない
- 保証書を必ず受け取る。
- 購入した販売店へ連絡する
- 「壊れた=誰が払う?」とすぐ結論を出さないこと。
- 販売店がどんな不具合についても一切責任を負わないことは同じではありません。
- 必ず保証書をもらってください。
- 「何か月保証ですか?」だけでは足りません。
「修理代って、自分が払わなければいけないの?」
と思いますよね。
中古車販売店をしていると、この問題は非常に重要だと感じます。
結論から言えば、
購入後に故障したからといって、必ず販売店が全額負担するわけでも、必ず購入者が負担するわけでもありません。
ポイントになるのが、
「保証」と「契約不適合責任」
です。
似ているようですが、実は別のものです。
今回は、中古車購入後すぐに故障した場合に誰が修理代を負担するのか、できるだけ分かりやすく解説します。
※この記事は一般的な中古車売買についての解説です。個別の契約・故障についての法的判断は、契約書や車両状態などによって異なります。
まず結論|「壊れた時期」だけでは決まらない
例えば、
納車翌日にエンジンが故障した。
これだけ聞くと、
「販売店が無料で直すのが当然では?」
と思うかもしれません。
反対に販売店側から、
「中古車なんだから故障することもあります」
と言われるかもしれません。
しかし、実際にはもっと細かく考える必要があります。
重要なのは、
いつ故障したかだけではなく、
なぜ故障したのか、購入時の契約内容に適合していたのか、保証対象なのか、通常予想される使用損耗なのか
といった点です。
自動車公正取引協議会も、中古車は使用歴があるため納車後に不具合が発生することがあり、購入時には保証書などで保証範囲を確認するよう案内しています。
そもそも「保証」とは?
まず分かりやすいのが、
販売店の保証です。
例えば中古車情報に、
「3か月・3,000km保証」
「1年間保証」
などと書かれていることがあります。
これは販売店などが定めた保証条件に従って、対象となる故障が発生した場合に修理等を行うものです。
ここで重要なのが、
「保証期間」だけを見ないこと。
です。
例えば、
「1年間保証だから安心!」
と思って購入しても、
故障した部品が保証対象外なら、その保証では修理してもらえない可能性があります。
自動車公正取引協議会も、保証付き中古車については、保証範囲や期間などが記載された保証書を受け取り、内容を確認することを勧めています。
保証書では「期間」より「範囲」を見る
中古車を購入するとき、私なら保証書のここを確認します。
- 保証期間
- 保証距離
- 保証対象部品
- 保証対象外部品
- 消耗品の扱い
- 修理時の自己負担
- 修理できる工場
- 保証を受けるための条件
例えば、
エンジン本体は対象だけど、センサー類は対象外
という保証も考えられます。
逆に保証範囲が広い商品もあります。
したがって、
「保証あり」だけでは保証内容は分かりません。
契約前に、
「具体的にどこまで保証されますか?」
と確認してください。
では「契約不適合責任」とは?
ここから少し法律の話になります。
現在の民法では、売買されたものが契約の内容に適合していない場合について、
「契約不適合責任」
という考え方があります。
簡単に言えば、
「契約した内容と、実際に引き渡された車の状態が違っている場合に、売主側が負うことのある責任」
と考えると分かりやすいでしょう。
例えば、
「正常に走行できる中古車として購入した」
にもかかわらず、引き渡された時点ですでに重大な不具合を抱えていた――。
こうしたケースでは、単純に、
「保証なしだから一切対応しません」
だけで済むとは限りません。
自動車公正取引協議会も、現状販売(保証なし・定期点検整備なし)の中古車であっても、通常予想される使用損耗とはいえないエンジン不具合があり、売買時には分からなかったケースでは、無償修理を求められる場合があるとの相談事例を掲載しています。
※公取協の一部Q&Aには旧民法の「瑕疵担保責任」という表現が残っていますが、現在の民法では契約不適合責任の制度に改められています。
「保証なし」と「何が壊れても自己負担」は同じではない
ここは中古車購入者に特に知っておいてほしい部分です。
例えば、
「保証なし・現状販売」
と書いてある車。
これを見ると、
「納車した瞬間から、何が壊れても全部自腹なんだ」
と思うかもしれません。
しかし、必ずしもそう単純ではありません。
自動車公正取引協議会が紹介する事例でも、現状販売で購入した中古車が納車直後にエンジン故障したケースについて、通常の使用損耗とはいえない不具合で、売買時に分からなかった場合には無償修理を要求できると説明しています。
つまり、
販売店の保証制度と、法律上の責任は分けて考える必要があります。
逆に「すぐ壊れた=販売店負担」とも限らない
ここも重要です。
例えば納車1週間後に、
ワイパーゴムが劣化した。
電球が切れた。
あるいは中古車の年式・走行距離・価格・契約内容からみて、通常想定される消耗や劣化だった。
こうしたケースまで、
「納車直後だから全部販売店が無料で直すべき」
とは一概に言えません。
中古車は新車ではありません。
使用歴があります。
部品も新品ではありません。
だからこそ、
故障した部品と故障原因を見る必要があります。
例えば「納車3日後にエンジン故障」なら?
仮に、
5年落ち、走行5万kmの中古車を購入。
納車3日後。
普通に走行していたら突然エンジンが停止。
調べると、購入前から存在していたと考えられる重大な不具合だった。
この場合、
「保証なしだから全部お客様負担です」
だけでは判断できません。
契約時にどのような状態の車として販売されたのか。
不具合の内容。
販売時の説明。
整備内容。
購入者が事前に不具合を知らされていたか。
などを確認する必要があります。
では「納車半年後」なら?
これも、
半年経ったから絶対に自己負担
とは一概には言えません。
反対に、
半年しか経っていないから販売店負担
とも限りません。
例えば半年間で1万km以上走行していた。
その間にメンテナンスをしていなかった。
事故や誤った使用があった。
消耗部品が寿命を迎えた。
という可能性もあります。
つまり、
期間だけで決めることはできない
ということです。
購入者の使い方が原因なら?
当然ですが、購入後の使用方法が原因で故障した場合は話が変わります。
例えば、
警告灯が点灯しているのに走り続けた。
オーバーヒートしているのに走行した。
指定されているメンテナンスをしなかった。
購入後に無理な改造をした。
事故で故障した。
こうした場合まで販売店に修理代を負担してもらえるとは限りません。
だからトラブルになったときは、
「誰が悪いか」から入るより、「故障原因は何か」を確認すること
が重要です。
消耗品はどうなる?
中古車では非常に揉めやすいポイントです。
例えば、
- タイヤ
- ワイパー
- ブレーキパッド
- バッテリー
- 電球類
など。
こうした部品は使用によって消耗します。
そのため、保証でも対象外になっていることがあります。
ただし、
「消耗品だから、どんな状態で販売しても問題ない」
という意味ではありません。
例えば販売時に、
「タイヤ新品」
と説明されていたのに、実際には新品ではなかった。
これは単純な消耗の話とは違います。
契約時にどのように説明され、どのような内容で販売されたかが重要です。
「エンジン・ミッション保証」も内容を確認
中古車販売店でよく見るのが、
「エンジン・ミッション保証」
です。
安心感がありますよね。
ただ、
エンジン周辺の部品が全部保証される
とは限りません。
「エンジン本体」と、
センサー。
補機類。
電装品。
エアコン。
などは別に扱われる可能性があります。
だから、
「エンジン保証というのは、具体的にどの部品までですか?」
と聞いてください。
「保証で直します」と言われたら書面を確認
これも大切です。
契約前に営業担当者から、
「壊れても全部保証で直しますよ!」
と言われた。
ところが実際に故障すると、
「それは保証対象外です」
と言われた。
こうしたトラブルを避けるためにも、口約束だけにしないことです。
自動車公正取引協議会も、口約束は後から「言った・言わない」になりやすいため、約束した内容は注文書などに記載するよう案内しています。
保証についても、
保証書を必ず受け取る。
そして、
対象部品を読む。
ここまでやってください。
故障したら、いきなり別の工場で修理しない
購入直後に故障したとき、かなり重要です。
例えばエンジン警告灯が点灯。
近くの整備工場に持って行き、
自分の判断で10万円の修理をした。
その後、販売店に、
「購入直後だから10万円払ってください」
と言っても、話が複雑になる可能性があります。
販売店側としては、
「こちらで故障原因を確認したかった」
「こちらなら保証対応できた」
「指定工場での修理が保証条件だった」
という可能性があるからです。
安全上緊急を要する場合を除き、まずは、
購入した販売店へ連絡する
ことをおすすめします。
故障したときに残しておきたいもの
購入直後にトラブルが発生したら、
記録を残してください。
例えば、
- 警告灯の写真
- 異音の動画
- 故障した日時
- そのときの走行距離
- 故障した状況
- レッカーの記録
- 整備工場の診断結果
- 販売店とのやり取り
などです。
「納車してすぐ壊れました」
だけより、
納車時30,120km → 3日後30,184kmでエンジン停止
という記録がある方が、状況を整理しやすくなります。
契約書・注文書・保証書を用意する
販売店に連絡するときは、
注文書・契約書・保証書
を確認してください。
特に、
- 保証の有無
- 保証期間
- 保証距離
- 保証範囲
- 現状販売なのか
- 納車整備の内容
- 車両状態についての記載
- 特約
などを見ます。
自動車公正取引協議会も、注文書の控えや保証書はトラブル解決の重要な資料になるため、保管するよう勧めています。
中古車購入後に故障したら、この順番で動く
私は次の流れをおすすめします。
- 安全な場所に車を止める
- 故障状況を写真・動画で記録する
- 走行距離を記録する
- 購入した販売店へ連絡する
- 勝手に修理する前に対応方法を確認する
- 保証書・注文書を確認する
- 故障原因の診断を受ける
- 保証対象か、契約内容との不適合が問題になるかを整理する
重要なのは、
「壊れた=誰が払う?」とすぐ結論を出さないこと。
まず原因と契約内容を確認します。
販売店が「保証なしだから対応しません」と言ったら?
ここも今回の記事で一番覚えておいてほしいところです。
販売店の保証がないことと、
販売店がどんな不具合についても一切責任を負わないことは同じではありません。
特に納車直後に重大な故障が発生した場合には、
「保証なしと言われたから仕方ない」
だけで終わらせず、
契約時にどのような状態の車として販売されたのか
を確認してください。
自動車公正取引協議会でも、現状販売の中古車について、通常予想される使用損耗とはいえない不具合が売買時に存在していたケースでは、無償修理を求められる場合があるとの見解を示しています。
ただし「中古車だからこその状態」も考える
一方で購入者側も、
中古車=新品ではない
ことを理解して購入する必要があります。
例えば、
15年落ち。
走行15万km。
格安の現状販売車。
と、
3年落ち。
走行2万km。
整備・保証付き。
では、購入者が通常期待する車両状態も同じとは限りません。
契約不適合かどうかを考える際には、単に故障したという事実だけではなく、契約内容や車両の性質、説明された状態などを含めて判断する必要があります。
保証付き中古車なら「保証書」が非常に重要
保証付きで購入するなら、
必ず保証書をもらってください。
そして、
「保証期間だけ」
ではなく、
保証対象部品一覧
まで見ます。
自動車公正取引協議会の相談事例でも、保証付き中古車で故障した場合は保証内容に基づいて対応を求めることになり、保証書などで内容を確認しておくことが重要だとされています。
私なら購入前に、
「エンジンが壊れた場合は?」
「ミッションは?」
「エアコンは?」
「電装品は?」
と具体的に聞きます。
遠方の中古車購入はさらに慎重に
最近はインターネットだけで中古車を購入することも珍しくありません。
しかし遠方購入では、
故障したときに販売店へ簡単に車を持ち込めない
という問題があります。
例えば保証修理は無料でも、
販売店までの輸送費は誰が負担するのか?
ここまで確認しておいた方がいいでしょう。
自動車公正取引協議会も、ネット通販による中古車購入では、納車後すぐに動かなくなるなどの相談事例を紹介し、可能な限り現車を直接確認するよう勧めています。
中古車購入前に聞いてほしい7つの質問
契約する前に販売店へ聞いてみてください。
① この車に保証は付いていますか?
② 保証期間・走行距離は?
③ エンジン・ミッションは保証対象ですか?
④ エアコン・電装品は保証対象ですか?
⑤ 消耗品はどこまで対象ですか?
⑥ 遠方で故障した場合はどうなりますか?
⑦ 納車後すぐ故障した場合は、まずどこへ連絡すればいいですか?
これを確認するだけでも、購入後のトラブルはかなり減らせます。
【保存版】納車直後に故障したときのチェックリスト
故障したら慌てて修理する前に確認してください。
- 安全な場所に停車した
- 警告灯を撮影した
- 異音・症状を動画に残した
- 故障時の走行距離を記録した
- 購入店へ連絡した
- 注文書・契約書を確認した
- 保証書を確認した
- 保証対象部品か確認した
- 故障原因を確認した
- 購入前から存在した不具合の可能性を確認した
- 販売店の了承なく修理を進めていない
- 販売店とのやり取りを記録した
結論|「保証なし=全部自己負担」と思い込まない
中古車を購入したあとに故障した場合、
誰が修理代を払うのかは、故障した時期だけでは決まりません。
販売店保証の対象なら、まず保証内容に基づいて対応を求めます。
保証がない場合でも、
契約した内容に適合していない不具合
が問題になるケースでは、契約不適合責任を検討する余地があります。
反対に、
通常の消耗。
購入後の使用が原因の故障。
保証対象外の部品。
などであれば、購入者負担になる可能性もあります。
だからこそ中古車購入では、
「何か月保証ですか?」だけでは足りません。
見るべきなのは、
何を、どこまで、どんな条件で保証してくれるのか。
そして契約時には、
車の状態・整備内容・保証内容を書面で残しておく。
購入後すぐ故障したら、勝手に修理を進める前に販売店へ連絡する。
この3つを覚えておいてください。
中古車は機械ですから、故障の可能性をゼロにはできません。
だからこそ重要なのは、
「絶対に壊れない中古車」を探すことではなく、「壊れたときにどうなるか」まで確認して買うことです。

